Tシャツ制作ガイド(初心者向け)¶
ガイド情報
所要時間: 約4-6時間(休憩込み) | 難易度: 初心者向け | 重要度: スキル構築の基礎
このページの目的: ゼロからオリジナルTシャツを作成し、Marvelous Designerでの衣装制作の基礎スキルをしっかりと身につけます。
このガイドで身につくスキル
- ✅ 基本パターン作成の完全理解
- ✅ 縫製技術の基礎マスター
- ✅ サイズ調整とフィッティング技術
- ✅ オリジナル衣装制作への自信
事前準備
- 既存衣装のフィッティングを完了済み
- Marvelous Designerの基本操作に慣れている
- アバターが正常に読み込まれている
🎯 完成目標¶
今回作成するTシャツの仕様: - シンプルで実用的なデザイン - VRChatでの動作に最適化 - 様々なアバターに対応可能 - カスタマイズの基礎となる構造
📐 設計思想:なぜTシャツから始めるのか?¶
Tシャツが最適な理由¶
学習に最適な理由
1. 構造がシンプル - 基本的な幾何学形状のみ - 複雑な曲線や装飾がない - 理解しやすいパターン構成
2. 失敗リスクが低い - 修正が容易 - 実験的な調整がしやすい - 完成までの道筋が明確
3. 応用範囲が広い - 他の衣装の基礎となる - バリエーション展開が容易 - サイズ調整技術が身につく
🚀 ステップ1: 設計とプランニング¶
基本設計の理解¶
設計図の理解
Tシャツの構成要素: 1. 前身頃(フロントパネル): 胸部分 2. 後身頃(バックパネル): 背中部分 3. 袖(左右2つ): 腕部分 4. 襟(ネックライン): 首周り
作成する順序: 1. 前身頃 → 2. 後身頃 → 3. 袖 → 4. 縫製 → 5. 調整
サイズ設定の基準¶
アバターに合わせたサイズ設定
基準となる測定値(一般的なVRChatアバター): - 胸囲: 80-90cm - 着丈: 60-70cm - 袖丈: 25-30cm - ゆとり: 各部5-10cm程度
サイズの考え方
最初は少し大きめに作って、後で調整する方が安全です。
🛠️ ステップ2: 前身頃の作成¶
基本的な長方形パターンの作成¶
ステップ 2-1: 前身頃の基本形状作成
Rectangle ツールでの基本形状作成: 1. 「R」 キー(または Rectangle ツール)を選択 2. 2Dパターンウィンドウで以下のサイズで長方形を描画: - 幅: 45cm(胸囲90cmの半分) - 高さ: 65cm(着丈) 3. 「A」 キー(Arrow ツール)に戻す
Property Editor での正確なサイズ設定: 1. 作成した長方形を選択 2. Property Editor で 「Size」 を確認 3. 必要に応じて数値を直接入力して調整
ステップ 2-2: 首周りの加工
ネックライン(首周り)の作成: 1. 前身頃パターンを選択 2. 「Edit Pattern」 ツールをクリック 3. 上辺の中央部分を選択 4. 下方向に約10cm凹ませてネックラインを作成 5. 曲線ツールで自然な首周りの形に調整
理想的なネックライン: - 幅: 15-20cm - 深さ: 8-12cm - 滑らかな曲線
🛠️ ステップ3: 後身頃の作成¶
前身頃をベースにした効率的な作成¶
ステップ 3-1: 前身頃のコピーと調整
効率的な後身頃作成法: 1. 前身頃パターンを選択 2. 「Ctrl + C」 でコピー 3. 「Ctrl + V」 でペースト 4. 新しいパターンを右側に移動(後身頃用)
後身頃固有の調整: 1. ネックラインを浅めに調整(前身頃より5cm程度浅く) 2. 全体の長さを前身頃より2-3cm長く設定 3. パターン名を「Back」に変更(識別用)
前後の違いについて
- 前身頃: ネックラインが深い、丈がやや短い
- 後身頃: ネックラインが浅い、丈がやや長い
🛠️ ステップ4: 袖の作成¶
袖パターンの基本構造¶
ステップ 4-1: 袖の基本形状
袖のパターン作成: 1. Rectangle ツール で以下のサイズの長方形を2つ作成: - 幅: 40cm(袖口の余裕込み) - 高さ: 28cm(袖丈) 2. 一つずつ、アバターの左右の腕付近に配置
袖口と袖付けの調整: 1. Edit Pattern ツール で袖の形状を調整 2. 袖付け部分(肩に接続する部分)を少し曲線にする 3. 袖口(手首側)を少し絞る
ステップ 4-2: 袖の配置と向き
正しい袖の配置: - 左袖: アバターの左腕近くに配置 - 右袖: アバターの右腕近くに配置 - 向き: 袖付け部分がアバターの肩に向くように
🧵 ステップ5: 縫製ライン(Internal Line)の設定¶
縫い合わせる部分の指定¶
ステップ 5-1: 縫製ラインの描画
Internal Line ツールの使用: 1. ツールバーから 「Internal Line」 ツール選択 2. 以下の縫製ラインを順番に描画:
必要な縫製ライン: 1. 肩線: 前身頃の肩と後身頃の肩を接続 2. 脇線: 前身頃の脇と後身頃の脇を接続 3. 袖付けライン: 身頃と袖の接続部分 4. 袖下: 袖の下側を閉じる線
縫製ラインの注意点
- 赤い線(Internal Line)で描画
- 接続する2つのエッジが同じ長さになるよう調整
- 線の始点と終点が正確にパターンのエッジに接する
ステップ 5-2: 縫製の実行
自動縫製の実行: 1. 全ての縫製ラインが正しく描画されていることを確認 2. 「2D Pattern」 → 「Free Sew」 をクリック 3. エラーが出た場合は該当する縫製ラインを修正 4. 成功すると自動的に縫い合わされる
🎭 ステップ6: 初回シミュレーションと基本調整¶
シミュレーション実行¶
ステップ 6-1: 初回フィッティング確認
シミュレーションの実行: 1. アバター周辺にパターンが配置されていることを確認 2. 「スペースキー」 でシミュレーション開始 3. Tシャツがアバターに着せられる過程を観察 4. 初期の問題点を確認
よくある初期状態: - ✅ 理想: 適度にフィットしている - ⚠️ 調整必要: きつすぎる・緩すぎる - ❌ 要修正: 大幅なサイズ違いや形状の問題
基本的な調整作業¶
ステップ 6-2: サイズとフィットの調整
全体的なサイズ調整: 1. 問題がある場合、まずシミュレーション停止 2. 「Ctrl + A」 で全パターンを選択 3. 「Transform」 → 「Scale」 でサイズ調整 4. 再度シミュレーション実行で確認
部分的な調整: - 胸部がきつい: 前身頃の幅を拡大 - 丈が長い: 前後身頃の高さを調整 - 袖がきつい: 袖の幅を拡大 - 首周りが狭い: ネックラインを広げる
🎨 ステップ7: 詳細調整と品質向上¶
物理特性の最適化¶
ステップ 7-1: 布の物理設定
VRChatに適した物理設定: 1. 全パターンを選択 2. Property Editor で 「Physical Property」 を確認 3. 以下の設定を適用: - Fabric Preset: Cotton(綿) - Particle Distance: 8(品質と軽量化のバランス) - Bend: 0.3(適度な柔らかさ) - Stretch: 0.1(少し伸縮性)
設定の意図: - VRChatでの安定した動作を重視 - リアルすぎる物理は負荷が高いため避ける - 自然な見た目を保持
見た目の調整¶
ステップ 7-2: 色とテクスチャの基本設定
基本色の設定: 1. パターンを選択してProperty Editor確認 2. 「Color」 で好みの色を設定 3. 前身頃、後身頃、袖を同じ色に統一
推奨色の例: - 白: RGB(255, 255, 255) - 清潔感 - ネイビー: RGB(25, 25, 112) - 落ち着き - グレー: RGB(128, 128, 128) - 汎用性
🔧 ステップ8: 最終調整とテスト¶
アバターとの協調性確認¶
ステップ 8-1: 動作テスト
アバターの動作確認: 1. シミュレーション実行中にアバターのポーズを変更 2. 「Avatar」 → 「Edit Avatar」 → 「Pose」 3. 様々なポーズでTシャツの動きを確認: - 腕を上げた状態 - 前かがみの状態 - 座った状態(可能であれば)
確認ポイント: - 不自然な伸縮がないか - アバターの体を貫通していないか - 動作時に異常な動きをしないか
品質チェックリスト¶
Tシャツ完成品質チェック
構造・技術面: - [ ] 前身頃、後身頃、左右袖の4つのパターンで構成 - [ ] 全ての縫製ラインが正しく機能している - [ ] サイズがアバターに適切にフィット - [ ] ネックライン、袖口が自然な形状
シミュレーション品質: - [ ] 安定したシミュレーション実行 - [ ] アバターの動作を阻害しない - [ ] 不自然な貫通や浮きがない - [ ] VRChatに適した軽量設定
見た目品質: - [ ] 色が統一されている - [ ] 全体的なプロポーションが良好 - [ ] ネックラインが美しい - [ ] 袖の長さとフィットが適切
📤 ステップ9: 保存とエクスポート¶
プロジェクトファイルの保存¶
ステップ 9-1: プロジェクト保存
作業内容の保存: 1. 「File」 → 「Save As」 を選択 2. ファイル名:「MyFirst_Tshirt_v1.zprj」 3. 保存場所:「VRChat衣装制作/Projects/」フォルダ 4. 定期的な保存を習慣づける
VRChat用エクスポート¶
ステップ 9-2: FBX形式でエクスポート
Unity統合用のエクスポート: 1. 満足のいく状態でシミュレーション実行 2. 「File」 → 「Export」 → 「FBX」 3. エクスポート設定: - Scale: 1.0 - Format: FBX 2020 - Include Avatar: チェックを外す - Weld Identical: チェックを入れる 4. 保存場所:「VRChat衣装制作/Exports/」
🎉 完成と達成の確認¶
学習目標の達成確認¶
習得スキルの確認
このガイドで身につけたスキル:
📐 設計スキル - パターンの基本構成の理解 - サイズ設定とプロポーションの把握 - アバターとの関係性の理解
🛠️ 技術スキル - Rectangle ツールでの正確なパターン作成 - Edit Pattern ツールでの形状調整 - Internal Line での縫製ライン設定 - Transform 機能での調整技術
🎛️ 調整スキル - シミュレーション結果の評価 - 問題特定と解決方法の選択 - 物理設定の最適化
💾 管理スキル - プロジェクトファイルの管理 - エクスポート設定の理解 - ファイル命名とフォルダ整理
🚀 次のステップとスキルアップ¶
習得したスキルの応用¶
このTシャツをベースにした展開案:
- カラーバリエーション作成
- 袖丈の違い(長袖、半袖、ノースリーブ)
- ネックラインの変更(Vネック、タートルネックなど)
- 基本的な装飾追加(ポケット、プリントなど)
推奨次ステップ¶
学習継続の選択肢
1. Unity統合に進む(推奨) 作成したTシャツをVRChatで実際に使用 Unity統合ガイドに進む →
2. より複雑な衣装に挑戦 スカートやドレスなど次の段階に スカート制作に挑戦 →
3. 物理設定を深く学ぶ 品質向上のための詳細設定 衣装物理学を学ぶ →
🔧 トラブルシューティング¶
Tシャツ制作でよくある問題¶
「縫製ラインでエラーが出る」
対処法:
- 線の長さの確認:
- 接続する2つのエッジの長さが大幅に違う
-
Edit Pattern で長さを調整
-
線の位置の確認:
- Internal Line の始点・終点がパターンエッジに正確に接していない
-
拡大表示して正確に描き直し
-
複雑すぎる形状:
- シンプルな直線から始める
- 慣れてから曲線を多用
「Tシャツが変な形になる」
対処法:
- パターンサイズの見直し:
- 基本サイズ(45×65cm程度)に戻す
-
段階的に調整する
-
縫製順序の確認:
- 肩→脇→袖付け→袖下の順番
-
一度に全部縫わず、段階的に実行
-
物理設定のリセット:
- Physical Property をデフォルトに戻す
- Cotton プリセットから始める
「サイズ調整がうまくいかない」
対処法:
- 部分的調整の活用:
- 全体のScale調整ではなく個別パターンで対応
-
特に胸部、ウエスト部分は個別調整が効果的
-
アバターサイズの確認:
- アバター自体のスケールが標準的か確認
-
必要に応じてアバターのScale調整も検討
-
参考値の活用:
- 一般的なTシャツサイズを参考にする
- 最初は少し大きめに作って縮める方向で調整
📚 さらなる学習リソース¶
Tシャツ制作の発展¶
技術向上のための参考:
- 実際のTシャツの観察
- 手持ちのTシャツの構造を確認
-
縫製位置や形状の研究
-
他のアバターでのテスト
- 異なる体型のアバターでの確認
-
汎用性の向上
-
コミュニティでの共有
- 作品の公開と フィードバック収集
- 他の制作者との情報交換
Tシャツ制作完了!
おめでとうございます!あなたは今、Marvelous Designerでオリジナル衣装を制作できる技術を身につけました。この基礎スキルは、より複雑で美しい衣装制作への確実な第一歩です。
自信を持って次のステップに進みましょう!
💡 創造性のヒント¶
デザインのインスピレーション¶
Tシャツのバリエーション例:
- カジュアル系: ゆったりとしたフィット、明るい色
- フォーマル系: タイトなフィット、落ち着いた色
- スポーツ系: 伸縮性重視、動きやすい設計
- アート系: 個性的な形状、特殊な色組み合わせ
次回への展開案: - ロゴやプリントの追加 - 異素材の組み合わせ - レイヤードスタイルの提案 - 季節感のある調整
これらの発展は基本をマスターしてからの楽しみです!