カジュアル服制作ガイド(中級)¶
ガイド情報
所要時間: 約4-8時間(制作する衣装数により変動) | 難易度: 中級 | 重要度: レイヤードスタイル・実践応用の習得
このページの目的: Tシャツ・スカート制作で身につけた技術を発展させ、複数パーツを組み合わせた本格的なカジュアルウェアを制作します。
このガイドで身につくスキル
- ✅ 多層レイヤードシステムの構築
- ✅ 複合パーツ間の物理連携制御
- ✅ フーディー・ジャケットなど複雑形状の制作
- ✅ パンツ・ジーンズ制作技術
- ✅ カジュアルウェア特有のスタイリング技法
- ✅ VRChat向け軽量化・最適化手法
🎯 今回制作するカジュアルウェアセット¶
段階的制作アプローチ¶
3段階のカジュアルウェア制作
Stage 1: パーカー(フーディー)制作 (中級前半) - 基本フード構造の理解 - ポケット・リブ素材の追加 - 厚手素材のシミュレーション
Stage 2: デニム・カジュアルパンツ制作 (中級) - パンツパターンの基本構造 - ベルトループ・ポケット詳細 - タイトフィット物理設定
Stage 3: レイヤードカジュアルコーディネート (中級後半) - インナー・アウター・ボトムスの統合 - 異なる素材感の組み合わせ - VRChat環境での最適動作
🧥 Stage 1: パーカー(フーディー)制作¶
フーディー設計と理解¶
ステップ 1-1: フーディー構造分析
基本構成要素の確認:
カジュアルウェア特有のポイント: - ゆとり感: タイトフィットではなくリラックスフィット - 厚手素材: 通常のTシャツより重く・厚い素材感 - 機能性: フード・ポケットなど実用的な要素 - 重ね着対応: インナーとの組み合わせ前提
メインボディの作成¶
ステップ 1-2: フーディーボディの基本形状
Tシャツパターンを拡張したベース作成: 1. 前回のTシャツプロジェクトを参考に基本形状を作成 2. 寸法調整でカジュアルフィット用に拡大: - 幅: +8-12cm(ゆったり感) - 着丈: +5-8cm(腰まで隠れる長さ) - 袖丈: +3-5cm(手首完全カバー) 3. アームホール: 少し大きめに(動きやすさ重視)
素材感の調整:
フード部分の制作¶
ステップ 1-3: フードパターンの作成
フード基本形状の作成: 1. Polygon ツール で以下の形状を作成:
2. 3D形状での調整: - アバターの頭部に合わせて配置 - 自然な頭部のカーブに沿った形状に調整 - 顔周り部分は少し余裕を持たせるフードと首元の接続: 1. Internal Line でフード下端とボディ後ろ襟を接続 2. 段階的縫製で一気に縫わず、少しずつ形状確認 3. フード内部の Self Collision 設定で形状安定化
ステップ 1-4: フードの物理設定最適化
フード特有の物理調整:
Air Resistance: 0.05-0.1 (風でなびく軽やかさ)
Self Collision: 有効 (フード内部の形状保持)
Collision Offset: 2-3mm (アバター頭部との適切な距離)
フード動作テスト: 1. アバターの頭を左右に振る動作で確認 2. フードが自然に追従するか確認 3. 顔部分を覆いすぎないか確認 4. VRChatでの視界への影響をチェック
カンガルーポケットの追加¶
ステップ 1-5: 機能的ポケットの制作
ポケット形状の設計:
ポケット制作手順: 1. Rectangle ツール でポケット本体を作成 2. 前身頃との Internal Line で上端以外を縫製 3. Pocket Tool(使用可能な場合)で立体感を調整 4. ポケット内部の物理設定でリアルな動きを実現
リブ素材部分の制作¶
ステップ 1-6: 袖口・裾リブの追加
リブ素材の特徴理解: - 伸縮性: 高い Stretch 値(0.4-0.6) - フィット感: 身体に密着する特性 - 復元力: 伸ばしても元に戻る - 厚さ: メイン素材より薄め
袖口リブの制作: 1. 袖端に幅8-12cm のリブ部分を追加 2. Physical Property でリブ専用設定:
3. 袖本体との自然な接続 4. 手首周りのフィット感確認👖 Stage 2: デニム・カジュアルパンツ制作¶
パンツパターンの理解と設計¶
ステップ 2-1: パンツ構造の基本理解
パンツの基本構成:
デニム特有の設計要素: - 5ポケット構造: 前2つ、後ろ2つ、小銭入れ1つ - ベルトループ: 7-8個のループ - ステッチライン: 装飾的な縫製ライン - やや厚手: Tシャツより重い素材感
基本パンツパターンの作成¶
ステップ 2-2: パンツ型紙の作成
前股上パターンの作成: 1. Polygon ツール で基本形状を作成:
2. Edit Pattern で股部分のカーブを調整 3. アバターの脚部に合わせた自然な形状に後股上パターンの作成: 1. 前股上をコピーして基本形状を作成 2. お尻部分を拡張(前より3-5cm広く) 3. 股上を深く(前より2-3cm長く) 4. より自然なお尻のカーブに調整
ステップ 2-3: 内股・外股の処理
内股部分の調整: 1. 内もも部分の Internal Line を正確に設定 2. 左右の脚部分が自然に繋がるよう調整 3. 歩行時の摩擦を考慮した余裕確保
外股部分の調整: 1. 外もも・お尻部分のライン調整 2. 座った時の余裕も考慮 3. VRChatでの様々なポーズに対応
デニム特有のディテール追加¶
ステップ 2-4: ポケット・ベルトループの制作
5ポケットシステムの実装:
ベルトループの追加: 1. Rectangle ツール で細長いストリップを7-8個作成 2. 各ループ:幅2-3cm × 長さ6-8cm 3. ウエストライン周りに等間隔で配置 4. Internal Line でウエストバンドに縫製
ステッチラインの装飾: 1. Line ツール でデニム特有の縫製ラインを描画 2. 太ももの外側に縦のステッチライン 3. ポケット周りの装飾ステッチ 4. Topstitch 機能で立体感を追加
パンツの物理設定とフィッティング¶
ステップ 2-5: デニム素材のシミュレーション
デニム特有の物理特性:
Fabric Preset: Heavy Cotton / Denim
Particle Distance: 8-10 (安定性重視)
Bend: 0.5-0.7 (硬めの素材感)
Stretch: 0.1-0.2 (少しの伸縮性)
Density: 0.4-0.5 (重厚感)
Friction: 0.3-0.4 (デニム特有の摩擦)
フィッティング調整: 1. アバターのポーズ変更で動作確認 2. 座り動作での膝周りの余裕確認 3. 歩行動作での股部分の負荷確認 4. VRChat想定ポーズでの全体バランス
🎨 Stage 3: レイヤードカジュアルコーディネート¶
多層システムの設計と管理¶
ステップ 3-1: レイヤード構成の計画
3層レイヤードの例:
レイヤー間の関係性: - インナー: 肌に直接触れる、軽やか、動きやすさ重視 - アウター: メインの見た目、防寒・ファッション性 - ボトムス: 安定感、実用性、全体のバランス調整
レイヤー間物理連携の制御¶
ステップ 3-2: 複数衣装の物理調整
レイヤー別物理設定:
インナーレイヤー(薄手シャツ):
メインレイヤー(フーディー):
ボトムレイヤー(デニム):
ステップ 3-3: レイヤー間干渉制御
Collision 設定の最適化: 1. レイヤー間距離: 2-5mm の適切な間隔設定 2. 干渉部分の特定: 肩・腕・腰周りの重点管理 3. Priority 設定: インナー → アウター → ボトムスの優先順位 4. VRChat負荷軽減: 不要なCollisionの無効化
統合シミュレーション調整: 1. 全レイヤー同時シミュレーション実行 2. 問題部分の個別調整 3. 全体バランスの最終確認 4. VRChatでのパフォーマンステスト
スタイリング技法とカスタマイズ¶
ステップ 3-4: カジュアルスタイルの表現技法
色彩・素材の組み合わせ:
モノトーンカジュアル:
カラフルストリート:
季節感の表現: - 春: 軽やかな色合い、薄手素材感 - 秋: アースカラー、厚手素材感 - 冬: ダークトーン、重厚な質感
ステップ 3-5: アクセサリー・ディテールの追加
機能的アクセサリー: 1. キャップ・ビーニー: フードと組み合わせた頭部アクセサリー 2. スニーカー: カジュアルスタイル完成のフットウェア 3. バックパック: 背面アクセサリーでストリート感
デザインディテール: 1. ロゴ・プリント: ブランド感のある装飾 2. ダメージ加工: デニムの使い込み感表現 3. フェード効果: 自然な色褪せの表現
⚙️ VRChat最適化とパフォーマンス調整¶
カジュアルウェア特有の最適化¶
VRChat向けカジュアルウェア最適化
ポリゴン数管理:
インナーシャツ: 2,000-3,000 triangles
フーディー: 6,000-8,000 triangles
デニムパンツ: 4,000-6,000 triangles
総計目標: 12,000-17,000 triangles (Good範囲)
テクスチャ最適化: 1. 共通マテリアル: 類似色の統合 2. UV効率化: 重複部分の最小化 3. 解像度調整: 1024x1024を基準に最適化 4. 透明度処理: Alpha Cutoffで軽量化
物理最適化:
動作確認とテスト工程¶
VRChatでの実用性テスト
基本動作テスト: 1. 待機ポーズ: 自然な着こなし確認 2. 歩行・走行: 衣装の追従性確認 3. 腕の動作: 袖・フードの動き確認 4. 座り動作: パンツの形状維持確認
VRChat特有動作テスト: 1. ダンス: 激しい動きでの安定性 2. ジェスチャー: 手の動作での袖の動き 3. インタラクション: 物理干渉の確認 4. 長時間着用: シミュレーション安定性
✅ カジュアルウェア制作完了チェックリスト¶
カジュアルウェア技術習得確認
Stage 1: フーディー制作: - [ ] 基本ボディパターンをTシャツから発展できた - [ ] フード部分を機能的に制作できた - [ ] カンガルーポケットを立体的に実装できた - [ ] リブ素材の物理特性を適切に設定できた
Stage 2: デニムパンツ制作: - [ ] パンツの基本型紙を正確に作成できた - [ ] 5ポケットシステムを実装できた - [ ] ベルトループ・ステッチディテールを追加できた - [ ] デニム特有の物理設定を適用できた
Stage 3: レイヤードコーディネート: - [ ] 多層システムを安定して動作させることができた - [ ] レイヤー間の物理干渉を適切に制御できた - [ ] VRChat基準内での軽量化を達成できた - [ ] 統合テストで実用レベルの品質を確保できた
全体技術習得: - [ ] 複合パーツシステムの設計能力 - [ ] 異なる素材感の表現技術 - [ ] レイヤードスタイリング技法 - [ ] VRChat特化の最適化手法
🌟 次のステップ¶
カジュアルウェア制作技術を完全にマスターしました!
複数パーツの統合管理と異なる素材感の表現技術は、プロレベルの衣装制作に直結する重要なスキルです。
次の挑戦:
技術を極める:
📚 学習成果と応用範囲¶
習得した高度技術¶
複合パーツ制作技術: - フーディーなど複雑形状の構造理解 - 機能的ディテール(ポケット・フード)の実装 - リブ素材など特殊素材の物理設定
レイヤードシステム技術: - 多層衣装の安定した統合管理 - レイヤー間物理干渉の精密制御 - VRChat環境での軽量化最適化
スタイリング・デザイン技術: - 色彩・素材の効果的組み合わせ - カジュアルスタイルの表現手法 - 季節感・文化的要素の表現
他衣装への応用¶
応用可能な技術: - ジャケット・コート: フーディー技術の直接応用 - 制服・スーツ: 複合パーツ技術の活用 - スポーツウェア: レイヤード技術の活用 - コスプレ衣装: ディテール制作技術の応用
プロフェッショナルスキルへの発展¶
商業レベルへの応用: - VTuber衣装制作での差別化技術 - 商用アバター衣装の品質基準達成 - ファッションブランドVR展開への参加 - 衣装制作コミュニティでのリーダーシップ
カジュアルウェア制作マスター完了!
おめでとうございます!あなたは今、プロフェッショナルレベルの複合衣装制作技術を習得しました。
複数パーツの統合管理、異なる素材感の表現、レイヤードスタイリング技法など、商業品質の衣装制作に必要な全ての基礎技術が身についています。
自信を持って、より高度な挑戦や創作活動に進んでください!
💡 創造性とインスピレーション¶
デザインアイデア集¶
文化・地域スタイル: - アメリカンカジュアル: デニム・フーディーの王道組み合わせ - 日本ストリート: 原宿系カラフル・個性的レイヤード - 韓国カジュアル: オーバーサイズ・モノトーン中心 - ヨーロピアン: 上品・洗練されたカジュアル
シーン別スタイリング: - 学校・日常: 清潔感・動きやすさ重視 - デート・外出: おしゃれ感・個性表現 - アウトドア: 機能性・実用性重視 - イベント・パーティー: インパクト・話題性
季節・気候対応: - 春の軽やか: パステルカラー・薄手レイヤード - 夏の涼感: 通気性素材・シンプル構成 - 秋の重厚: アースカラー・多層レイヤード - 冬の暖か: ダークトーン・厚手素材
これらのアイデアを参考に、あなただけのオリジナルカジュアルスタイルを創造してください!
🔧 トラブルシューティング¶
カジュアルウェア制作でよくある問題¶
「フードがうまく形にならない」
対処法:
- 基本形状の見直し:
- フードパターンが小さすぎないか確認
- アバター頭部との位置関係を再チェック
-
3Dビューで実際の装着状態を確認
-
物理設定の調整:
- Self Collisionを有効にして内部形状を安定化
- Bend値を上げて形状保持力を向上
-
Air Resistanceで自然な動きを追加
-
段階的な調整:
- まずシンプルな形状から始める
- 徐々にディテールを追加していく
- 各段階でシミュレーション確認を実行
「レイヤード時に衣装同士が干渉する」
対処法:
- レイヤー間距離の調整:
- Collision Offsetを2-5mmに設定
- 特に肩・腕周りの距離を重点確認
-
Layer Priorityで優先順位を明確化
-
物理設定の見直し:
- 不要なSelf Collisionを無効化
- Thicknessを適切な値に調整
-
Particle Distanceでバランス調整
-
パターンサイズの調整:
- インナーを少し小さめに調整
- アウターに十分な余裕を確保
- 問題部分のローカル調整を実施
「VRChatでパフォーマンスが悪い」
対処法:
- ポリゴン数の削減:
- 見えない部分のポリゴン削除
- LOD設定で遠距離時の軽量化
-
不必要な詳細ディテールの简化
-
物理設定の軽量化:
- Particle Distanceを8-12に統一
- Update Rateを30Hzに下げる
-
不要なCollisionの無効化
-
マテリアル最適化:
- テクスチャサイズの適正化
- 共通マテリアルの使用
- 透明度処理の最適化
「パンツのフィッティングが難しい」
対処法:
- 基本パターンの確認:
- アバターのプロポーションとの整合性確認
- 股部分のカーブが自然かチェック
-
左右対称性の確認
-
動作テストの実施:
- 座り動作での余裕確認
- 歩行動作での追従性確認
-
様々なポーズでの形状維持確認
-
段階的調整:
- まず全体のサイズから調整
- 次に部分的な問題を解決
- 最後に細部のフィッティング調整
これらの対処法を参考に、品質の高いカジュアルウェアを完成させてください!